7 大西瘍科書
巻数不詳、未刊写本。玄白四七才頃の著述で、現存するものただ一部、巻三の零本1)一冊が大槻文庫に伝わるのみである。ヘイステルの外科書 Heelkundige Onderwijngen. 1775.の抄訳で、「解体新書」の反訳完成後、すでに宝暦十一年(一七六一)春、江戸参府のカピタンに随伴して来た吉雄耕牛2)から借覧して真価を知っていた玄白が、外科書の反訳の着手第一に行った草稿の転写本と思われる。ヘイステル外科書は尨大なため、玄白は一部分のみを抄訳したに過ぎず、養子の伯元や門人の大槻玄沢らに命じてほぼ訳しおえた。「紫石斉蔵刻目録」によると「瘍医新書」と題したヘイステルの邦訳は病門二五〇に分れ、金瘡2)之部二二条と瘡瘍3)之部二九条の部分が玄白の手に成り、余は伯元と玄沢の追訳となっているが、のち出版されたものはすべて玄白の改訳にかかる。
本書は「瘍医新書」瘡瘍之部の未定訳稿と考えられるが、巻三のみの零本であるため確実なことは明かでない。今後進出の資料に期待するものである。
(注)
1)零本 ひとそろいのうち、全部そろっていない本。大半が欠けている本。
2)金瘡 主に刃物でできた傷
3)瘡瘍 外科的の疾患や腫物を指す