(一)著述
杉田玄白の著述について現在二三部をわれわれは知ることが出来る。そのうち明治初年までに木版で刊行されたものはわずか七部に過ぎず、未刊本で明治以後今日まで活版に翻刻1)されたものも四部を算するのみで、題名の明らかな著述の半数に満たない。二三部のうちに、青柳文蔵の「続諸家人物誌」や穂亭主人の編に係る「西洋学家訳述書目」に記されている「天眞楼漫筆」と「天眞楼雑稿」は目下所在が不明で、前者はあるいは「和蘭事始」の異本かとも思われるし、後者は彼の日記「鷧斎日録」中に散見するような雑文を集めたものであったかとも想像される。ここには管見に入った2)二〇部の著述について、おおよその紹介を試みようとしたものである。簡に失したことを諒とされたい。
(注)
1)翻刻 和装本・軸物・古文書など毛筆による崩し字で書かれた原文を楷書体に置き換え読みやすくすること。
2)管見に入った 細い管を通して見たような狭い見識