6 的里亜加纂稿
一巻、未刊写本、玄白四四才ころの著述と思われ、これまた彼としては異例の漢文で綴られている。
テリアカとは、解毒の功ある万能薬として古来著名な西洋の古い薬剤であって、蘭方医家の間でもこれが本質の究明に多くの努力が払われていた。玄白は「解体新書」完成ののちオランダ医書からこの処方を検出し、最も有効と思われる数方をとり、調製法を詳しく紹介しこれを前野良沢と中川淳庵に見せた。内容は取り立てゝ論ずる程のものではないが、西洋の薬物にわが国産生薬の何を充てるかという同定又は代用に苦心したあとが見える。
本書は写本のまゝで伝えられたが、蘭方必須の薬剤を説いたものであるから、伝本は比較的多く、書名も一定せず『底野迦方纂稿』または『底野迦真方』と題したものもあるが、内容は伝写の誤りを除くほか、ほゞ同一である。玄白の臨床医家としての研究態度を知る好資料たるのみならず、製薬法を詳述したものとして薬学史上重要な文献である。