2 広瘡総論
一巻、本書も未刊本で流布きわめて少く、僅かに「瘍科大成」に附録して合綴したものが京大富士川本中にあるのと、他に著者名も明記のない粗末な伝写本が存するのみである。やはり青年時代の作で「瘍科大成」を編した時の副産物と思われる。梅毒に関する専書で、おもに漢籍の所論をとってはいるが、当時おこなわれていたいくつかの流派の療法にもふれている。主として水銀剤や山帰来などの生薬の処方を記してある。江戸中期の梅毒に対する思想を知る好史料であるとともに、初期の梅毒の専書としても疾病史上重要な文献であろう。また玄白の蘭学以前の医学を知るうえに「瘍科大成」とともに貴重な存在である。本書は今まで全く知られなかった玄白の著述で、片々たる小冊であるが再認識すべき文献として今後の研究をまつものである。広瘡とは広東から伝播した瘡との意で、梅毒の異名である。