桜島大根で血管をしなやかに

加治屋勝子国立大学法人 鹿児島大学 学術研究院 農水産獣医学域農学系 准教授

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 鹿児島県の伝統野菜である桜島大根は、よく見かける大根のように細長い形ではなく、カブのような丸く膨らんだ形をしています。だいたい8~12kg程度のものが出回っていますが、2003年に世界一大きな大根としてギネス認定された桜島大根は、重さが31.1kgもありました。よく見かける大根が1本1kg程度ですから、だいたい30本分になります。海外では「モンスター大根」として各種メディアで紹介されましたが、モンスター級なのはこの大きさだけではなく、桜島大根が持つ血管強化機能が高く評価されたからなのです。桜島大根には、血管を強くてしなやかに伸び縮みさせる「トリゴネリン」という成分が他の野菜よりも非常に多く含まれています。トリゴネリンは、血管をやわらかくして、血液がサラサラ流れるようにしてくれます。私達の体はたくさんの細胞が集まってできていますが、この細胞がちゃんと働くためには血液によって運ばれる酸素と栄養が必要です。この血液の通り道が血管ですので、血管がボロボロになってしまうと、体の隅々の細胞に必要な酸素や栄養が行き渡らなくなってしまうのです。健康な血管は、柔らかいゴムホースのようにしなやかに伸び縮みすることで心臓と協力して血液を運んでいますが、血管が硬くなると血液が流れにくくなってしまい、いろいろなトラブルが起きてしまうのです。この小さなトラブルが、冷え症や片頭痛の原因になったり、高血圧や動脈硬化を引き起こしたり、日本人の死因の上位にある心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす恐れがあります。病院の協力を得て実際に人が桜島大根を食べた時の影響を調べた(臨床試験)トライアル評価では、1日に170g程度(野球ボールぐらい)の桜島大根を10日間連続で食べることでトリゴネリンが吸収され、血管機能が向上し、桜島大根が健康な血管を保つことへの期待が高まっています。
 桜島大根は辛みの無い大根で、よく見かける大根と同じようにサラダやおろしとして生で食べることもできますし、煮込むと味が染みやすく、箸で切りやすい柔らかさなのに煮崩れしにくいのが特徴です。トリゴネリンは茹でたり蒸したりしても分解されにくく、冷凍やレトルト加工でも桜島大根の中にしっかり保持されていますので、漬物や干し大根だけではなく、かき揚げや唐揚げ、防災保存食の雑炊、ゼリー飲料や大福、氷菓子などのスイーツ、大根おろしのフリーズドライやサプリメント等にも幅広く使われています。皆さんがコロナウイルスに負けず、元気に過ごしていくためには、健康な血管を保つことが必要です。いろんな桜島大根料理や加工品を食べる機会を増やして、血管から健康にしていきましょう!

研究室前に並べられた桜島大根達

筆者紹介
加治屋勝子(かじや かつこ)
 食品で体を守りたい!という思いで管理栄養士の国家資格を取得。静岡県立大学大学院にて分析技術や機能性評価法を習得して博士(食品栄養科学)を取得。約10年間、山口大学医学部で医者の卵達を育てながら主に循環器疾患について学び、治療法の開発や診断方法の確立に携わる。そして2013年より鹿児島大学農学部にて「病気になってから治療する」のではなく「病気にならないようにしたい」という熱い思いを胸に予防医学研究をおこなっている。