みんなで小浜を健康寿命トップの町に


Warning: Use of undefined constant post - assumed 'post' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /export/jusys/www/jp/s/b/js-hpbs/0/6/js01704406/sugita-genpaku.com/wp/wp-content/themes/project/single.php on line 7

家森幸男 (やもり ゆきお)武庫川女子大学教授

テーマ:

 コロナ禍の試練も3年目を迎え、まず自分が健康でなければ、他の人も健康にできない、健康づくりは皆が力を合わせる連帯作業だと学びました。この酷しい試練の先に明るい未来を拓く為に、今こそ小浜市をあげて健康長寿の町づくりをしましょう。
 今から40年前の1982年、WHO(世界保健機関)は、初めて1日の食塩摂取の目標値を1日6g(今では5g)と専門委員会で決めました。それは、要介護の“寝たきり”や認知症の原因として多い高血圧や脳卒中を防ぐ為です。その目標が重要な事は、私共が10数年をかけて開発した、人と同じように脳卒中を起こすラットでも食事が重要で、減塩や大豆、魚の蛋白質、食塩の害を防ぐ野菜・果物に多いカリウム、乳製品に多いマグネシウムなどで、脳卒中が予防出来る事が実証されたからです。そこで、その目標値が全ての人に当てはまるかを検証する世界健診を提案し、2年かかって百万ドルの研究基金を日本で集め、WHOに寄附し、世界61地域での脳卒中など循環器疾患と栄養の健診を1985年に開始出来ました。
 この研究は、塩なしでの食生活で高血圧もなかったマサイ族から、海抜3700mの高地で塩茶、バター茶を多飲して重症高血圧の多いチベット族まで、まる一日の24時間尿を集めて貰い、塩分摂取と高血圧や脳卒中死亡率との正相関を実証しました。そして、日本食の特色も30年余にかけてようやく分かりました。24時間尿による栄養チェックという、同じ物差しで世界の様々な民族の食事を比較した初めての研究で分ったのは、大豆のイソフラボン、魚のタウリンを摂っている人では、動脈硬化で心臓の血管が詰まる心筋梗塞が少なかったのです。実は日本人は、世界一、大豆・魚の両方を食べているのです。その為、寿命に影響する心筋梗塞の死亡率が先進国中で最低で、世界一の平均寿命が保たれているのです。
 しかし、大豆・魚を常食する人は食塩も多く摂取しているので、2001年から“健康ひょうご21県民運動”では、ご飯と共に大豆や魚を減塩食で摂ることを勧めたのです。
 その結果、10年目の健診では、一日の食塩摂取量の平均値は12gから10gに減り、大豆・魚を摂っている事が尿で検証された人では、動脈硬化を抑える善玉HDLコレステロールが多く、認知症の予防も期待出来る血液の葉酸値が高かったのです。
しかし、大豆・魚を良く食べている人は、あまり食べてない人に比べて食塩の摂取が1日約5gも多かったのです。これでは心筋梗塞が減らせて平均寿命は延びても、高血圧から脳卒中になる人が増え、“寝たきり”、認知症が増え健康寿命が10年も短くなります。
 これは、兵庫県の話だけではないのです。かつて福井県から長寿健診を依頼され、小浜市で24時間尿を集め分析しましたが、さすがに海の幸に恵まれた小浜の方は魚からのタウリン量が多く、伝統食の大豆料理を食べる機会も多いため、イソフラボンも摂れていたのですが、残念なことに食塩の摂取が多かったのです。従って、魚・大豆などの伝統食を、塩分の少ない、例えば蒸し料理や出汁の味付け、酢の調味などを活用して食べて戴ければ、脳卒中にも認知症にもならず、生涯元気で健康寿命を延ばしていただけます。

 食塩の摂取は、どなたも自分が1日何g摂っているか分かりません。目に見える大豆・魚、野菜などの摂取と同じように、食塩も“見える化”が必要です。それには、小学生の時から実際の栄養摂取量が数値でわかる世界健診の尿チェックを朝一番の採尿だけでも実施してはいかがでしょうか?適塩の食生活は1週間でも慣れれば可能なのです。子供の尿チェックの成績の改善が家庭の食環境の改善によるのかは、子供の週末明けの月曜朝の尿チェックでわかります。こうして“適塩和食”の食生活が家庭で広がり、地域の外食産業で広がれば、小浜市が健康寿命トップの町になることも夢ではありません。
 WHOは「賢く食べて(Eat Wisely)健康に生きよう(Live Well)」と世界に呼びかけています。この賢く食べる“賢食術”を実践する第一歩として次の“七不可”を守って下さい。

この健康長寿の“賢食術”の内容は、昨年3か月NHKの第2放送「心を読む」で13週にわたり放送され、聞いている間に健診の値が改善したとの嬉しいお知らせも受けました。

筆者紹介

家森幸男(やもり ゆきお)
1937年京都市生まれ。京都大学大学院修了。医学博士。同大学名誉教授。現在、武庫川女子大学教授、兵庫県健康財団会長、健康加齢医学振興財団理事長、NPO法人世界健康フロンティア研究会理事長。脳卒中ラットの開発に成功、脳卒中が栄養で予防可能なことを実証し、WHOの協力で世界61地域を30年かけて健診。大豆や魚介類の常食が生活習慣病を少なくし、適塩和食で健康寿命延伸の可能性を検証。ベルツ賞(1993)、紫綬褒章(1998)、杉田玄白賞(2004)、瑞宝中綬章(2012)などを受章、『大豆は世界を救う』(法研)『世界一長寿な都市はどこにある?』(岩波書店)、『遺伝子が喜ぶ「奇跡の令和食」』(集英社インターナショナル)他、著書多数。


Warning: Use of undefined constant post - assumed 'post' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /export/jusys/www/jp/s/b/js-hpbs/0/6/js01704406/sugita-genpaku.com/wp/wp-content/themes/project/single.php on line 31